第5号 悟弓巻頭言

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  名大弓道部本年の課題      師範 魚 住 文 衞
                         

 前年の王座決定戦やリーグ戦を顧みて、私の所感を述べてみたいと思う。

 名大弓道部ができてから八年を経た今日、部の内容が年を逐って充実してきた。即ち、部員の増加、分散していた学部の集結、弓道場の建設とこれに伴う練習量の増加、大学当局や先輩の力の入れかたなど、プラスの要因が重なって、射術や的中率が向上し、昨年は全日本学生弓道の王座決定戦という晴れの舞台へ進出することができた。このことは名大弓道部の過去を知る先輩は誰しも感慨深いものがあろう。しかし、昨年の東京都内大学リーグ戦の成績(別表)と比較すると、あながち喜んでばかりはいられない。王座決定戦における名大の成績(別表)は、都内大学リーグのCクラスに属することになる。都内大学のA、Bクラスは殆ど私立大学で占められている。私立大学の弓道部と、国公立大学の弓道部と比較する場合、私立大学には、いろいろの有利な条件があるので私立大学の方が強いといえばそれまでであるが、国公立大学とても有利な条件がある。それを十分活用してBクラスやAクラスの水準にもってゆくことは不可能ではないと思う。名大弓道部の有利な条件は、先輩諸兄の力の入れ方と、弓道に対する部員の研究心と理解力が優れていることである。

 私は名大弓道部師範とは名目ばかりで、直接の指導時間が僅少で、この点はマイナスの条件で責任を感じているが、幸い先輩諸兄が随時師範代を勤めてくれており、血の通った指導になっているのは寧ろプラスの面ではないかと思われる。また、名大は、高校時代に選手であった新入生が少なく、新入部員の大部分は未経験者であるが、一年経つと概ね基本体を修得し、病癖を生じていないのは驚く程の上達振りと云える。これは、先輩の善導と部員の旺盛な研究心と優れた理解力によるものと私は見ている。名大弓道部の射形は、我田引水的な観察かも知れぬが、概ね射法の基本に適合しており、射形(外形)としては東京都大学リーグのAクラスに列しても決して遜色はないと思う。たゞ射の内容(気息、運行、バランス等が的中に結びつく)についての鍛練が十分でないのが残念である。

 今年の課題は、新入部員(未経験の)は、一年間は合理的な射形を整えることに専念し、二年生以上は、射の内容について一層の研究と鍛練を重ね、外形内容共にAクラスの実力をつけてもらいたいと念願するものである。


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