第30号 悟弓巻頭言

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 正射正中の追求      師範 魚 住 文 衞



 日本の弓は洋弓に比べ極めて素朴であり、原始的とも云えるのである。洋弓の握りは弓の中央で、握りの上下の弓力は均等であり、また照準器も取り付けてあり、矢の発射が真直ぐに作動する仕組みになっている。これに対して日本の弓は長弓で、握りの位置は上弭から約三分の二のところに設けられ、上下の弓力は握上が弱く、握下が強くなっており、絃をほぼ中心線に張り、矢を弓の右側にして引くので発射のときには矢が右方向且つやや上向きに作動するのである。従って的に向かって矢を真直ぐに作動するように手の内の働らきと左右両腕の働らきに微妙な技術を必要とするのである。更に的を狙うにも顔の向け方(物見)が違うと狙いも変わってくるのである。また、離れの良否によって矢勢が異なり上下に外れ易いのである。

このように不合理な日本の弓を正しい射法射技によってこれを合理化して正射を追求しなければならないところに日本弓道の難しさがある。

昔から弓射の原則は飛・貫・中とされ、矢を遠くへ飛ばし、且つ堅い物を射貫く力が強大で、然も中らねばならないと云われている。この三つの条件を満たすのが正射正中である。

この正射正中を求めるためには射法の基本に徹して練習を積み重ねる努力が肝要である。

また、弓道は武道であり、礼と和と不屈の精神力を涵養する人間修養の道である。「射は仁の道なり正しきを己に求む」と礼記射義にあるように、一射毎に反省して正しきを追求しなければならない。弓道の最高目標が真善美の追求であると云われる所以である。

昨年は名大弓道部の女子が全日本学生弓道選手権大会で優勝の栄誉を得たが、男子は東海学生弓道リーグ戦で満足の成果を得なかったことは残念である。

翻って昨年第三十九回全日本学生弓道王座決定戦の成績を見ると、愛知大学が東海学生弓道連盟の代表として出場し、第一回戦は九十六射七十九中(的中率〇・八二)の好成績で第二回戦に進出し、第二回戦では愛知大学は九十六射七十一中(的中率〇・七四)、日本大学が九十六射八十九中(的中率〇・九三)で愛知大学は敗退したが、日本大学は次々と勝ち進み決勝戦に於ても百六十射百四十八中(的中率〇・九三?二十射皆中四人、十八中三人、十四中一人)という驚異的な的中率によって優勝している。このことを考えると人間の能力には限界がないといえるのである。

名大弓道部諸君の正射正中による的中率の向上を期し、部員一致団結し一層の奮起を希望してやみません。


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