第23号 悟弓巻頭言

TOP巻頭言集第23号 悟弓巻頭言



 第一部復活を目指して      師範 魚 住 文 衞



 名大は東海学生弓道連盟加盟校のうちでも古い伝統を有し、永年一部校として活躍してきたが、先年二部校に転落したことは残念である。昨年は部員諸君が一部校への復帰を期して頑張ってくれたが目的を果たすことができなかったが、今年こそは部員全体が一致協力して的中率を向上し、所期の目的を達成してもらいたいと切望する次第である。

 的中率を向上するには先ず射形を整えばならないが、射形は弓道を始めてから一年も経てば一通りの射形が整うものである。それからが徐々に的中率が向上する道に入ってくるのである。

 弓道は総ての点において「調和」ということが大切であるが、的中率を高めるためには特に次の諸点の調和が絶対的な要件とも言えるのである。斜面打起こしの場合、大三(中力)以降離れまでにおいて注意しなければならないことを参考のため列記することにする。

一、弓の力(強さ)と自分の力(弓を引き分けるために使う力)との調和

註、引き分ける場合に、急激に力を入れたり、或は必要以上に力を入れて引き分けるとバランスが崩れるので的中しないものである。どの程度の力で引き分けを行なうのがよいかということは各自の研究によって自ら悟らねばならない。

二、息合い(気息)と引き分ける運動の調和

 註、総ての動作に息合いが伴わなければならないが一動作一息というのが原則である。引き分けを行う時の息合いは細く長い息で行うことが肝要である。斜面に打ち起こしながら静かに適量の息(胸八分目ぐらい)を吸い、打起こした位置で一~二秒息を止め、引き分けに移る頃から引き収めるまでの間息を下腹(丹田)に収める心持ちで(下腹を適度にふくらます)微かに息を漏らしながら(ごく微量な息を呼きながら)引き分けを行ない、会から離れに至るまで息を吸わないのが理想である。しかし、この方法は相当の錬達者でないと実行至難である。依て初学の時代においては次の方法で行なうことも差し支えないと思う。

  即ち、大三(中力)の位置で静かに息を呼き、次に静かに息を吸いながら引き分けて、引き収める頃に微かに息を呼いて適量の息(六分ぐらい)を保って会における持満を行なって離れに至らしめる。この方法が平易であろう。

引き分けの息合いは、その人その人の体質や肺活量の大小、弓の強弱、修熟の度合等によって異るが、会においては気道を開いたままで息を止めている状態がよい。(実際にはごく微量の息を呼き続けているのが理想であるが、それは錬達者でないと至難である)

三、全身筋骨の調和

 註、初心のうちは弓を引くのに左右両腕の力だけで引き、また左腕よりも右腕に力がはいり、更に両方の手先(拳)に力をいれて手先だけで引くのが通例である。これでは左右のバランスがとれないので手先だけでなく全身の調和ある運行ができるようになり、的中率も段々向上してくるのである。

全身の調和ある運行が左右両腕の力のバランスを保つに必要な条件である。全身の調和ある引き分けの運行を期するには、体の中心部分が発動して両腕を働かせるような心持ちで(下腹から胸骨胛骨~両上腕~両下腕~拳への筋力が働くように)修練を重ねることが必要である。


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