第22号 悟弓巻頭言

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 安定した的中の条件      師範 魚 住 文 衞
                         


 第二七回東海学生弓道リーグ戦は、入れ替え戦の奮斗もむなしく二部転落という予期しない結果に終わった。勝負は時の運と云われるが、敗因は必ずあるものである。チームの総的中率は六割二分で一部リーグ中、三位であるが、全リーグ中では七位で芳しい成績とは云われない。 

 結果が不調に終わった時は基本にたちかえって考え直してみることが必要である。即ち、的中の正確性の条件としては、(1)、離れの安定(矢束の一定、無理、むらのない離れ)、(2)、矢にかかる力の安定(五重十文字と弓力にあった筋力の使い方、射法八節の正確な運行)、(3)、狙いの正確さ(矢筋が的についていること)があげられる。

 的中ということからみれば、早気でも、ゆるみ離れでも、ちゞみ離れでも、少々狙いが悪くても、矢にかゝる力の合成と方向が適当であれば的中することになるが、これはいわゆる調子中りで安定性がない。

 人間は機械ではないから、試合に臨み、プレッシャーがかゝると精神的な動揺をきたし調子が崩れて迷いだし、手がつけられなくなることは誰でも経験していることである。調子中りは試合に通用しない。

 人体は生身であることを銘記し、常に正しい射法、射技の基本を繰返し、体にしっかりと覚え込ませ、正射必中の確固たる信念をもって試合に臨むことが必要である。射法、射技の詳細については別の機会に譲ることとし、ここでは練習にあたって特に気をつけるべき点を左に強調しておきたい。

 (1)、力の過ぎたるは及ばざるがごとし。
    ゆったりと、しかも張りをもって運行すること。

 (2)、弓力以上の矢勢は求むべからず。
    
弓力にあった力でおとなしく離れゝば、矢飛は安定し矢勢も最高となる。体力に合った弓を使用すべし。

 (3)、自分の骨相に合った矢束まで一ぱいに引分けよ(タグルことではない)。
    中途半端な矢束は調子中りのもと、精神的動揺の入り込むスキをつくる。会では縦線の伸びを中
心とした張りと、気力で精一杯伸びあい、離れを誘え。


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