第21号 悟弓巻頭言

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 大学弓道に対する期待      師範 魚 住 文 衞
                         

 「若い」ということは、非常に尊いことであり、無限の可能性を秘めている。 

 弓道は、他のスポーツや日本古来の伝統的な武道と比べ、寿命が格別長い。他のスポーツや武道に於ては、既に、大学時代に体力的な峠を越えるものもあり、またほとんどが、最高潮に達するのに比べると、弓道の場合はまだまだこれからといった感じで、先が非常に長い。こうした意味から、弓道を修練する上で、「若い」ということは、特別の意味を有すると云える。

 大学弓道は、青年期の弓道であり、成年、壮年期の弓道の基礎となるものである。基礎が弱ったもの、基本ができていないものには、将来、発展性を望むべきもない。幹が細く、根張りの少ない木は大木となることが出来ず、風に倒され、水に流されて、立派な枝を張り、美しい花を咲かすことは出来ない。

 こうした意味合いに於て、大学弓道に期待することが多い。

 まず第一に、基本を培うこと。射技、射術の基本を忠実に守り、基本体型を確固たるものとすること。一度培った正しい基本体型は用意に崩れ難い。確固たる基本体型は、正しい練習方法と矢数の多さにより決まる。頭や口で弓を引くのではなく。体に覚えさせるよう不断の練習が必要である。

 第二に、弓道は単なる弓術にあらず、弓を引くのは人であり、心であることを肝に命じ、精神的な修練を忘れてはならない。的中にこだわり勝敗にこだわり、的に誘われ、はたまた上手に射って見せようと見栄を張り、よい結果のみを期待する。結果はご承知のごとく身体硬直し、伸展なく、上気して、的に中らず、敗戦の憂目を見る。これ常に、克己の修練が肝要なる所以である。若さ故に、未熟であり、荒削りであって当然であるが、もっと大胆に、伸び伸びとした若さに溢れた活力のある射を期待したい。

 若いことは無限の可能性を秘めている。大きな夢を持ちたい。目標は常に高く、お互い切磋琢磨して、限界に挑戦してみたい。為せば成るという不屈の信念を持って、一日一日の練習を充実したものにすれば、道自ら開かれん。


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